Japan Australia Information Link Media パースエクスプレス
パースエクスプレスVol.161 2011年6月号
前のページへ
<北米・南米大陸>
2回の旅では、共に食事を摂ることに手を焼いた。旅が終われば体重は激減していた。安子さんも治さんの帰りを待ちながら、終始健康状態を案じていた。当時を振り返り「心配していてもしょうがない。じゃあ一緒に行こう、と決めてから体力づくりに励みました」と話す安子さん。そして、ここからの旅は、タンデム(2人乗り)行となった。
日本国内で練習も行なったタンデム行は順調かと思いきや、過酷な自然状況下でのアクシデントは避けられず、治さんは肋骨を骨折したり、凍傷や高山病にかかったりした。また、安子さんがヘルニアを患い、緊急帰国を余儀なくされた。

しかし、モチベーションは下がるどころか、さらに上がり、北・南米大陸への旅を再開させる。そして、4,500mのアンデス山脈越えでは、この世のものとは思えない景色を目の当たりにし、「今でも瞼を閉じるとあの景色が思い浮かびます。風がそよぎ、自分たち以外にはアルパカの群れと上空を飛翔するコンドルしかいない。まさに神秘的で幻想的な風景でした」と安子さん。
大陸最南端に到着したのは、北南米大陸の旅をスタートさせて約1年6ヶ月後だった。この旅で、“チャレンジ” “発見” “感動”に“学び”が加わることになる。


<アフリカ大陸>
5つ目の大陸は、アフリカ大陸。アフリカ最南端の宿にてこれからの旅への決意を壁に記す。
2人乗りは、独りで運転している時とは違う。運転技量もさらに必要となり、肉体的、精神的な負荷も増す。しかし、2人の旅では役割分担ができる。安子さんはもっぱら、お金のことや食事を担当した。

マダカスカルの北部モロンダバにて。貧困にあえぐ中でも、子どもたちの笑顔は美しかった。

そして、アフリカ大陸を縦走し、エジプトに到着。ついに5大陸走覇を成し遂げる。ピラミッドの前で握手を交わす、治さんと安子さん。
予定ではその後、中東から北欧へ抜ける計画だったが、治さんが極度の脱水症状で熱中症にかかってしまった。気温約50度のところを480kmも走り続けていた。後から、その日は8名の死者が出たと知る。


<北欧一周>
大陸最北端に向け、北欧一周の旅がスタートした。途中、目的地の1つでもあったポーランドのアウシュビッツ収容所へ。
見事、2008年6月28日に大陸最北端の地、ノルウェー・ノールカップ岬に到着した。ここより北にはもう道は存在しない!

風と匂いを感じながら、バイクでユーラシア大陸横断、オーストラリア大陸一周、北米大陸・南米大陸縦走、アフリカ大陸縦走。そして、大陸最南端と最北端の地に足を付けた。しかし、治さんは、こう語る。「結果的に5大陸走覇とはなったけど、目標はそこではない。旅は現在も進行中。好奇心がある限り、そして世界中の子どもたちに会うためにも、まだまだ旅は続ける」と。