ジンベイザメの謎に迫る

 西オーストラリアは、いまだ謎の多いジンベイザメが毎年決まって現れる、世界でもめずらしい場所のうちの1つだ。毎年3月から4月にかけて、ニンガルーリーフでは大量のサンゴの放卵が一斉に行われるが、放卵が行われ始めたすぐ後からジンベイザメが現れ始め、約2週間でその数はピークに達する。この現象は、サンゴの放卵にともなって増えたプランクトンなどの海中生物をエサにするため起こるのではないかと考えられている。また、ニンガルーリーフにやってくるジンベイザメの数は年間約200〜400匹で、そのうちのほとんどは未成熟の若いオスである。なぜこの特定の世代だけが毎年ここ西オーストラリアの海を訪れるのかは分かっておらず、また彼らはどこから来てどこへ向かうのか、具体的な回遊ルートについても現在調査中である。
 ジンベイザメの繁殖については、研究者の間で現在最も大きな謎とされているが、これまでの調査でジンベイザメのオスとメスは非常に隔たったそれぞれの共同体で生活しているということが分かっている。しかし、彼らは繁殖を行うためにどこかに集まらなければならず、幼いサメが台湾、フィリピン、インドの沖あいに多く見られることから、このあたりの海域に集まるのではないかとの見解が有力だが、詳しいことはまだ明らかになっていない。



謎を解明するために

 AIMS(オーストラリア海洋科学研究所)の研究者達は、西オーストラリアを訪れるジンベイザメにタグをつけて、回遊ルートを解明するプログラムを実行している。1999年にニンガルーリーフで1匹のジンベイザメに人工衛星タグが取り付けられ、西オーストラリアから420kmはなれたインドネシアの方へ向かったことが確認された。また、2002年にはニンガルーリーフで2匹のジンベイザメにタグが取り付けられ、1匹はクリスマス島の方へ2,000km以上移動、もう1匹は35日間かけてインドネシアの方へ1,800km移動したことが分かり、ジンベイザメは西オーストラリアを離れたあと北の方角へ向かうとされている。近年マレーシアとフィリピンで行われた人工衛星遠隔計測研究により、ジンベイザメは平均して1日およそ24km泳ぐということが明らかになった。また米国では、タグを取り付けられたジンベイザメが13,000km離れた太平洋北西部まで37ヶ月かけて回遊したと報告している。
 オーストラリアではニンガルーリーフに毎年3月から7月の間に、クリスマス島に12月から1月の間にジンベイザメがやってくるが、研究者によるとジンベイザメがいつ頃どの場所に現れるのかは、生物学や海洋学など様々な学問的要因と密接に関わっていると言われている。現在世界中でジンベイザメに関する多くの調査や研究が行われており、このような研究がさらに進めば、いずれはジンベイザメについてのより詳しい生態や回遊ルートも判明するだろうと期待されている。














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