「ビルマという国−その2(ビルマの街角にて)」

  ぐったりと疲れた。とにかく休もう。一番最初に目についた路上喫茶の椅子に腰を下ろす。ビルマの首都ラングーン(ヤンゴン)ならどこにでも目にする、街角の喫茶店である。客はそれほど多くない。本当ならもっと人の多い下町に戻ってから腰を下ろすべきかもしれない。だが今はもう動くエネルギーが切れてしまった。ちょっと目立ちすぎるが、もう仕方ない。
 今朝は早くから動き回ってきた。1日で3つの約束をこなした。ヤンゴンの北から南まで、込んだバスに揺られて相当な距離を移動したはず。ようやく半時間ほど前、最後のアポイントメントを終えたところ。その最後の「密会」は特に緊張した。おそらく当局側に漏れると、とんでもないことになるだろう。私は良くて国外追放、私の話し相手は、悪くすると数年間刑務所へ入らなければならないはずだ。

何せ、反政府活動の組織と連絡を付けてくれ、という内容だったからである。とある人物を通して紹介してもらった彼は、形の上では合法的に首都に住んでいる。だが、本当のところ、政府に抵抗する組織と連絡を取りあっている。信用ある人物から紹介されたからといって、今日初めて会う彼をどこまで信じて良いのか分からない。もちろん、彼の方も、私をどこまで信頼して良いのか分からないはず。お互い不信のまま、手探り状態のまま話を始めた。もし彼に一方的に通報されてしまったら…。

The novice monks taking a shower with rain. Thamanya Monastery (Paan), Burma
 


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