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パースエクスプレスVol.142 2009年11月号

 前回は、西オーストラリア(WA)州のゴーゴン巨大天然ガスプロジェクトを取り上げ、WA州のみならず、国全体が希望に満ちた様子を紹介した。このプロジェクトでどれほどの経済効果が期待できるかといったことがしばしば話題となっていたことも述べたが、ここにきて、こういった巨大プロジェクトの影に潜む危険性などを示唆するような問題が起きている。8月下旬、WA州北西部のチモール海、モンタラ石油源で海底油田の原油採掘中の事故により多量の原油が海洋に流れ出し、70日以上過ぎた11月1日現在もまだ復旧されていない状況にある。周辺の海域は原油で汚染され、インドネシア側の島々の漁民にも多大な損害が出ているという。今回はこのオーストラリア史上最悪と言われる原油採掘事故についてお伝えしよう。

 8月21日未明に勃発したこの事故は、当初、楽観視されていたもののなかなか復旧されず、10週を越えた11月初旬でも原油が漏れ続けている。ここ最近、地元のメディアでもこの事故を頻繁に取り上げており、『状況は深刻(11月1日、The Sunday Times)』といった見出しの特集記事も組まれている。同記事によると「事故の直接の原因は、海底下3.6kmにある原油採掘パイプの先端に亀裂が入ったためだが、油田開発をしているPTTEP Australasia というタイに本部を置く巨大石油開発企業は、その原因の確認を拒否している。復旧のために10月中に4回もの修復作業が試みられたが、いずれも成功せず、同企業は現在、5回目の修復作業を計画中である。流出した原油の処理は、オーストラリア海洋保安局がその責任を担う」という。1日あたり400バレル(63,600リットル)流出しているということだが、その70日分の原油量は莫大だ。そして、「調査によると汚染海域に生息する15種の鯨やイルカ、30種の水鳥や5種の海亀が危険にさらされており、またインドネシアのロテ島ではすでに漁民に多大な被害が出ている」ようだ。現在、原油はインドネシア側に押し寄せているが、季節が変わるとオーストラリア側に南下してくるというから、ブルームをはじめとする海岸リゾート地域にとって事態は深刻だ。釣りやダイビングといったマリンスポーツも敬遠されてしまうだろう。被害を最小限に止めるためにも早いうちに手を打たなければならない。

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