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日本発豪州行き 蹴球戯言
Vol.224/2016/09

第26回「オーストラリアと日本のW杯予選」


 2018年ロシアW杯最終予選が始まりました! 何の因果か、オーストラリアと日本が同じグループに配され、凌ぎを削ることとなりました。本誌発行時点では、第2節まで行なわれておりますが、両国で明暗がはっきりと分かれましたね。 できれば、両国ともすんなりと本大会出場を決めてもらいたいものですが…。さて、今回の問題です。

【Q】もし、両国がW杯最終予選を勝ち残ることがで きずに本大会出場を逃してしまった場合、何が起こると考えられますか?

【A】答えは簡単です。大なり小なり両プロリーグの人気に影響が出るでしょう。特にオーストラリアの方が影響が大きいと筆者は考えます。プロリーグの歴史が少しだけ長い日本は、生粋のクラブサポーターがオーストラリアより多く存在し、代表の結果から受ける影響はオーストラリアよりは少ないのでは、と思います。しかし、サッカーファンやサポーターの興味を希薄にし、主に観客動員数の減少というクラブの経営上重要な収入減をきかねません。両国代表がW杯本大会に出場することは、プロリーグ興行を成り立たせるためにも、“義務”と言っても過言ではないでしょう。

 さて、最終予選の初戦を観た限り、両国が抱えている問題は日本の方が断然多いように感じました。最終予選は、約1年間をかけて行われます。 昨年のアジアカップ後に就任した日本代表のヴァヒド・ハリルホジッチ監督は、徐々に選手の入れ替えを行なっていくと考えられますが、現在の主力メンバーが2011年のアジアカップの時と然程変わっていません。いまだネームバリューに頼った選手選考をしている印象です。現に、最終予選の初戦、第2節ともにコンディションに問題を抱えているにも関わらず、出場している選手が何人かいました。途中で監督が変わったことも大きな原因ですが、オーストラリアに比べると新陳代謝が進んでいないと思われます。

 しかし、両国とも最終予選に挑む前に万全の準備は、できたとは言えませんでした。それは、海外リーグに所属する選手達を多く招集している事情によります。ただ、アジアカップの際に新たな選手の発掘に成功したオーストラリア代表、アンジェ・ポステコグルー監督に比べ日本代表のハリルホジッチ監督には、猶予が少なく下の世代のU-23がオリンピックにて目立った活躍ができなかったことも相まって、この最終予選序盤は世代交代をするタイミングと捉えられなかったのでしょう。何人かの新しい選手を招集し、出場もさせましたが、もしかしたらその新しい選手はもう2度と出場することがないかもしれませんね。

 また、最終予選に挑む代表にとって選手達の固定は、ある程度の「安定」を見込めますが、W杯に出場することに慣れてしまった選手達のモチベーションを保つことは難しく、日本はまさにこの悪循環に陥ってしまった感が強いです。オーストラリア代表も2006年から最終予選を勝ち抜き続けており、現在は良くとも、将来この悪循環に陥る可能性は否定できず、協会や監督のマネジメント能力が益々重要になっていくとこでしょう。そして、最終予選に挑む代表を応援する立場である我々のようなサポーターやファンの目線も固定化してしまっています。「出場して当たり前」の状況は、新たな刺激を生み難く、最終予選程度では盛り上がることができなくなっているように感じます。オーストラリア代表が久しぶりに出場を果たした2006年の最終予選、日本代表が初めてW杯本大会出場を果たした1998年の最終予選の当時の“あの”ピリピリ感やハラハラ感が薄くなっていると、皆さんは感じませんか?観る側、応援する側の真剣さも足りなくなっているのではないでしょうか?

 さて、監督による選手選考の問題、協会や監督によるマネジメントの問題、そして観る側、応援する側の問題を言いたい放題述べましたが、そういった問題を今後も解決することが難しいのであれば、今回の問題のように「今予選を勝ち抜く事ができなかったら…」が、実現してしまうことになりかねません。筆者は、特に日本代表に関しては一度“当たり前”ではなくなるように予選敗退という結果が必要ではないかと考えています。粗治療ではありますが、一度リセットし、客観的にW杯本大会を見つめ直し、もう一度、あの晴れ舞台に返り咲きたいという欲求を強くする必要があるのかもしれません。

 最後は、少々投げやりな言い方をしてしまいましたが、理想はW杯本大会出場を両国が果たし続けながら諸問題解決をしてほしいものです。 現時点で最終予選にて両国の現状は明暗が分かれていますが、10月11日および来年の8月31日、両国が対戦する際は同じような立ち位置にて「ピリピリ、ハラハラ」させて欲しいと願っています。