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日本発豪州行き 蹴球戯言
Vol.222/2016/07

第24回「オーストラリアと日本のプレースタイル」


 さて、筆者の拙い文章で好き勝手、言いたいことを書いてきました本コーナー、お陰様で連載2周年を迎えました。今までご愛読頂きました読者の皆様、ありがとうございます!今後とも宜しくお願いします。では、恒例の問題です。

【Q】オーストラリアと日本が、サッカーW杯やその他の公式戦で目指すべきプレースタイルの方向性について、あなただったらどちらを選びますか?
1. 結果を出すためにはスペクタクルは二の次で、負け ないためのサッカー(受動的サッカー)
2. 対戦相手のみならず、世界を驚かせるようなスペク タクル溢れるサッカー(能動的サッカー)

【A】少々極端な二者択一ですが、筆者個人的には2を 目指すべきだと考えています。が、両国の世論は1を望んでいるようです。その理由は、W杯やクラブW杯を観ても明らかです。どの様なスタイルのサッカーを披露しても、結果が伴わなければ批判されていることがほとんどだからです。

 では、なぜ2を目指すべきか、簡単にご説明しましょう。まず、代表やクラブチームは、様々なゲームプランを持っています。それは“臨機応変さ”とも言えます。チームにどの様な駒(選手)がいるのか、相手のチームが格上なのか格下なのか、選手達の先導役である監督がどの様な引き出しを持っているか・・・。そして、その時に最良と思われるプレースタイルを選択し、最良の「結果」をもたらすことが大切となります。大まかな傾向として、親善試合やテストマッチで理想のスタイルを模索します(能動、受動問わず)。 公式戦では、明らかなリスク回避の受動的サッカースタイルを基本としつつ、状況に合わせて能動的なスタイルを披露できる準備をする、が定石でしょう。つまり、どちらかといえば1がベースとなっています。

 ただ、オーストラリアや日本の代表、クラブは一時的に2(能動的なスタイル)を徹底しようとチャレンジした時期がありました。しかし、結果が伴わず、昨今はより1(受動的)の負けないサッカーに徹していると思います。 特に、短期決戦の舞台であるW杯に臨む両国の代表チームは、格上の相手との対戦でどうしてもリスクを負わない省エネサッカーに終始せざるを得ません。直近の2014年、ブラジルW杯での両国はグループリーグ敗退を喫し、期待に応えられませんでした。そういった状況でしたが、オーストラリア代表は多少のリスクを背負い、点の取り合いをした印象です。一方、日本代表は上記質問の答えの1とも2とも言い切れない、中途半端な印象でした。正直、試合を見ていてワクワクも面白みも感じませんでした。ちなみに、代表と比べれば、クラブのスタイルはより柔軟に選択が可能です。代表の短い拘束期間に比べ、クラブは約9ヶ月の長丁場であるリーグ戦を戦うため、修正するタイミングは多く、またリーグ戦の対戦相手は格の違いがそれほどないからです。しかし、クラブW杯の様な短期決戦では、やはり理由は同様に代表と同じ戦略を取らざるを得ないでしょう。

 ここで、筆者のサッカー感に絶大な影響を与えてくれた故ヨハン・クライフ氏の有名な格言を紹介します。それは「美しく負けることを恐れるな!無様に勝つことを恥と思え!」といったものです。氏は、究極の理想を追い求め、非常に能動的なスタイルを確立し、かつ結果も出すことに成功した数少ない偉人でした。筆者が影響を受けたそのスタイルは、当時流行していた強いフィジカルをもっていた選手達が潰し合うサッカーにも対抗して、見事結果を出すことに成功し、その点でも大いに影響を受けました。 非常に頑固で、決して万人に受け入れられる氏ではありませんでしたが、周りの批評をものともせず、自身の理想を追求することを諦めず、結果的にこの世へプレースタイルの多様性を産み出してくれました。それが、相手の長所を消す受動的なスタイルではなく、相手が誰であれ、リスクが多いにも関わらず、能動的なスタイルを徹底したプレースタイルです。実際にこのスタイルは、サッカー大国やビッグクラブしか選択が難しいかもしれませんでしたが、世界に選択肢の一つを提供してくれたのは間違いありません。

 筆者は、このクライフ氏の能動的なプレースタイルが、将来のオーストラリアや日本のプレースタイルになるべきだと考えています。当面は、1や2に偏らず、1と2の比重をできる限り2に傾けるようにすることが最良の策とも思っています。そして、サッカー大国やビッグクラブの仲間入りを果たすためには、いつか多大なリスクを背負い、能動的なプレースタイルによる結果を獲得しなければならないと信じています。

追伸:連載2周年を迎えられましたのは、本誌編集者やスタッフのご尽力に改めて、お礼申し上げます。今後も宜しくお願い致します!