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日本発豪州行き 蹴球戯言
Vol.203/2014/12

第5回「オーストラリアと日本のサッカーファン」


 早いもので連載第5回目となりました。今回は、両国のサッカーファンついてお届けします。では、恒例の問題です。

【Q】オーストラリアと日本のサッカー、どちらが盛り上がっているでしょうか? いやいや、ちょっと抽象的過ぎますね!では、盛り上がり、つまりスタジアムの雰囲気を盛り上げている観客の数は、どちらが多いでしょうか?

【A】まずは、リーグから。Aリーグ(2013‐14シーズン)とJリーグ(2013シーズン)の1試合あたりの平均観客数は、Jリーグの方が多いようです 。Aリーグは13,477人、Jリーグは17,226人でした。そして次に、代表戦。自国で開催された過去7試合分の代表公式戦及び親善試合の1試合あたりの平均観客数は、オーストラリアは41,995人、日本は48,229人でした。こちらも、直接スタジアムに足を運んだ観客は、オーストラリアよりも日本の方が多かったようです。

 さて、リーグや代表戦の観客数から判断すると、共にオーストラリアより多かった日本の方が盛り上がっているように思えますが、実は筆者の大雑把な印象では、オーストラリアの方が盛り上がっているのではないかと感じています。それは、先日のACL(アジアチャンピンズリーグ)にてオーストラリアのウエスタン・シドニー・ワンダラーズが優勝した時の印象が、そうさせています。TVにて観戦した決勝戦のあのスタジアムの雰囲気は、Jリーグを超えていると思いました。

 ちなみに、リーグと代表戦の観客数からサッカーに対する興味の対象は、共に代表戦の方が高いようです。ナショナリズムがくすぐられる対象が、クラブ同士が戦うリーグ戦よりも国同士の試合であることは間違いありませんが、「リーグ戦は興味がないけど、代表戦は興味がある」というサッカーファンが、数多く存在することは両国とにも事実のようです。しかし、代表が強くなるためには国内リーグの強化が重要で、リーグを盛り上げるためには「代表戦しか興味がない」といったサッカーファンをいかにリーグへ導くかといったこともこれからは大切になるのでしょう。

 では、読者の皆さん!「スタジアムにサッカーを観に行こうと思う理由を挙げてください」と言われたら何と答えますか?「痺れるような試合を観たい」「好きな選手を観たい」といった理由でしょうか。筆者は「日常では味わえない非日常を味わいたい」と思い続け、スタジアムに足を運ばせていました。しかし最近、その足が遠のいています。理由は、その非日常が味わえなくなってきているからです。

 近年、日本のサッカーシーンで“ファン”と同義語の“サポーター”について、ネット上で度々論争が起こっています。そのサポーターを「コアサポーター」と「ライトサポーター」もしくは「にわかサポーター」に分類し、一部で差別化するグループもいるようです。元々、日本ではサッカーファンはサッカー経験者が多く、サッカー経験者でない人を軽んじていた閉鎖的な時代もありました。但し、プロリーグ(Jリーグ)創設後は、徐々に差別はなくなりましたが、全くなくなったわけでもありません。スタジアムのゴール裏を陣取るような「コアサポーター」の中には、「ライトサポーター」や「にわかサポーター」が入ることができない雰囲気を作り出しているサポーターもいるようです。

 そう言ったことが影響を与えているかわかりませんが、サポーターの狼藉に世論がシビアに反応するようになり、特に差別的な発言や応援に対するペナルティーが厳罰化されています。もちろん、差別の排斥は世界的な潮流であり、間違いなくサッカーの世界でもあってはならないことですが、現在の日本の世論は余りにもシビアになり過ぎて、サポーターが少々窮屈さを感じているのも事実です。筆者は、相手チームに対する挑発行為はサッカーの世界ではあるべき姿と思っていますが、その挑発行為を排斥しようとしている節があります。果たして、そう言った窮屈さを感じるスタジアムに「非日常」を期待することはできるのでしょうか?

 実際、筆者はスタジアムに足を運ぶ機会が以前に比べてずっと少なくなりましたが、いつしか、再びかつての様に非日常を求めて足繁くスタジアムに通いたく思います。そしてオーストラリア、日本共にサッカーファンで埋め尽くされたスタジアムが、欧州や南米の歴史を重ねてきた雰囲気に負けないぐらい、老若男女問わず建物自体がうねるような盛り上がりを感じられるスタジアムとなることを願うばかりです。