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リレー小説
Vol.230/2017/3
第9回

【前回までのあらすじ】
沢田百々子、30歳。不審に思っていた男はサンフランシスコで出会っていた恩田正平だった。恩田はパースにいる万里を追いかけてパースに来た。

第12走者
筆者:村上


 

 レストランの一番奥の席で恩田正平と向き合った。変わらず笑顔は幼かったが、目は笑っていなかった。実際、恩田正平の彼女、万里がなぜパースにいるのか。私と万里は高校の時の同級生で、恩田正平が彼氏だなんて全く知らかなった。その万里がパースにいることも、当然知らずに私もパースに来た。その万里を追っかけて、恩田正平はパースにいる。3人を引き合わせたパースには、何があるのか?

「今度、万里も一緒に会おうよ」
「いいよ。ただ、彼女は海洋の研究で、ExmouthとPerthを行ったり来たりしているから、なかなかタイミングが難しくて。俺もあんまり会えてないんだ」
「へぇ、彼女、頑張ってるんだね」
「そうなんだ…。俺も頑張んなくっちゃいけないんだけど」
「何を?」
「今は言えないけど、もう少ししたらわかるよ(笑)」

“なんだそれ?”と思いながら、意味もなく乾杯をして、レストランに持ち込んだ生ぬるいビールを飲んだ。それから、サンプランシスコの思い出話を一方的に聞いた。恩田は私のことをよく覚えていた。私は全く恩田のことは覚えていない。Risaの連れていた男、ただそれだけ。

店を出て、バックパッカーズに戻る時、恩田に聞いた。
「万里は次、いつPerthに戻るの?」
「わからない…」

私に向きかけた恩田のその横顔は、かろうじて笑みを浮かべているのに、相変わらず目は笑っていなかった。



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