「ナヌムの家」に帰る時間になっても、李玉仙(イ=オクスン)さんが車に戻ってこない。また、裵春姫さんの悪口が始まった。李玉仙さんには前日、自身の生い立ちや中国での生活のことをじっくりと聞いていた。李玉仙はちょうど1年前、58年ぶりに中国から戻ってきたばかりだ。 当初は、生活環境の違いや言葉の障壁で、とまどうことばかり。感情を抑えて、思い通りの意思表示をすることができなかった。しかし、1年経ってやっと、「ナヌムの家」の生活にも慣れ、先月ようやく韓国の国籍が公式に認められた。
 徐々に、落ち着いた生活を送ることができるようになった。
 「最初は、ボケたおばあさんだと思われていましたよ。共産圏の国で50年以上も暮らしていたから、

   「どう対処していいかわからなかったんです。でも、もう心配することはないと思います。」
 「今は何が一番したいですか?」
 「子どもの頃できなかった、勉強をいっぱいしたいです。桃太郎の話は、覚えてますよ。私の家は貧しくて子ども全員が学校に行けなかった。弟や妹が学校から持って帰った本で、一緒に勉強しました。それに、これからは、戦争中私の身に何が起こったか、あなたたち日本の人にも説明したいと思っています。だから、ひらがなの勉強をしていたのです。」しかし、ひらがなの練習帳は、途中で途切れていた。
 「日本語を教えてくれるまゆみさんもいなくなったから、途中です。」(昨年まで「ナヌムの家」には、ボランティアで米倉まゆみさんという日本人女性が約3年間住んでいた)
   


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