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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda

Vol.202/2014/11


「記憶と記録の交叉(1)」



ビルマ(ミャンマー)とタイの国境、山中の難民キャンプで撮影した写真

 この7月から集中して、ビルマ(ミャンマー)で撮影した全ての写真を見直す作業を続けている。1993年5月から2014年5月までの21年間に撮影した分量は、数にしておよそ10万カットくらいになるだろうか。

 ファイル管理が容易であるデジタル写真は、PCのモニター上でその画像イメージを簡単に確認できるので、それほど問題はない。手こずっているのは、かさばるフィルムである。薄いビニールのスリーブ・フォルダーに入れたフィルムは、フォルダーを収納したケース毎に撮影年/地域別に整理している、と思っていた。だが、改めてケースの中をひっくり返してみると、タイとの国境付近で撮影したフィルムが国内の撮影分に混じったりしている。また、湿気を含んで液状化した乾燥剤が、劣化した小袋の裂け目から溶け出し、フィルムケースの内側にへばりついたりして、まずはその清掃作業に取りかからなければならなかった。さらに、カラーのポジ・フィルムはまだよいのだが、モノクロ(白黒)写真やカラーネガは、パッとひと目見てイメージを確認できないので、これまたひと苦労する。

 そんなことをしつつ、フィルムの見直しをしている。一枚の写真に最低一人の人物が写っているとして(風景写真や同人物で重なるカットもあるが)、最低10万人を写したことになる。

 今から21年前の1993年6月、ビルマ(ミャンマー)とタイの国境、山中の難民キャンプで撮影した写真に行き当たった。珍しいことに、集合写真を撮っていた。子どもたちを「ひとまとまり」として写している。一体、何人ぐらい写っているのだろうか。フィルムをスキャンしてデジタル化した後、パソコンのモニターで写真を拡大してみる。写っている人の数を数えてみた。顔をはっきりと確認できたのは、212人の子どもと3人の大人、合計215人であった。430の目が撮影者の私を見つめ返している。じっと見つめるその視線を改めて見返すと、何やら訴えるような目つきに圧倒されてきた。