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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda

Vol.199/2014/08


「抗いの彷徨(9)—上」



カレン民族のゲリラ兵たちと最前線に向かう

カレン民族のゲリラ兵たちと最前線に向かう。

 これまで、「軍政下に生きる人びとの暮らし」「先住民族」「世界を覆う貧困」という題材を中心に取材を続けてきたことを説明してきた。日本に戻ると、報告会や講演会で自分の取材してきたことを話す機会を設定してもらうことがある。そんな取材報告の終わりには、いつも質疑応答の時間を取ることにしている。その際、「取材中に困ったこと、危なかったことはなかったのですか」と質問されることがよくある。そんなとき、私は次のように答える。

 「自分はあくまでも取材者です。だから自分の取材の大変さを話すのはあまり得意ではないのです。取材者によっては、『取材の内容』そのものよりも、いかに大変な取材をしているのか、そのことを殊更強調する人がいますが、それはちょっとどうかな、と思っています」

 「また、自分はフリーランス・フォトジャーナリストというのを生業にしています。それは、ひとつの仕事です。でも仕事って、何でも大変じゃないですか。日本だと満員電車に揺られて時間通りに出勤したり、時にイヤな上司や部下と付き合わなければならないし。仕事の大変(時には不条理)さを強調しても、それで仕事が上手くいくわけでもないし、いい結果が得られるわけでもない。厳しい言い方かも知れないけど、やっぱり仕事って結果で判断される部分もあるわけだし、結果が上手くいかないからといって、仕事の過程の大変さを取り上げても、言い訳にしかすぎません」

 こんな説明をしながらも、どうしても取材の大変さを知りたいっていう人はいるものだ。そんな時、これまでの取材で自分が従軍中にした経験をかいつまんで話すことがある。というのも、戦場は人間を極限に追い込む場所の一つであるからだ。私の場合、従軍っていってもその戦場は、銃弾や砲弾が飛び交う市街戦ではなく、ビルマ(ミャンマー)の山奥、ジャングルの中を歩き回った戦場だった。