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               スペシャルインタビュー2「それぞれの思い」 
                イラクの現場から 
                Neville Watson氏は、Uniting Churchの聖職者として働き、法廷弁護士としても50年のキャリアを持つ。湾岸ピースチーム(Gulf 
                Peace Team)の一員として、1991年、反戦を掲げイラクに40日間滞在。そこで、イラクへの制裁措置に抗議する団体 「荒野の叫び」(Voices 
                in the Wilderness)に参加することになる。今回イラクに4ヶ月間滞在した彼は、イラク・ピースチームの結成を手伝い、爆撃で負傷した人々を慰安し、戦争の拡大防止と偏りのない報道に努めている。 
                 
              ◆イラク訪問の目的を教えて下さい。 
                 
                今回の滞在の目的は、人道主義的な局面(戦争が人々に何をもたらすのか)を世界に伝えることです。しかし、我々の耳に届くのは、いつも(特にABCチャンネルでは)戦略や戦術といった類のものばかりで、戦争が人々にどのようなことをしているかの十分な情報なんて一度も伝えられていません。 
                 
              ◆宗教的な役割は関係していますか?  
                かなり関係していると思います。私は神に呼ばれ、それに応えただけだと思っています。私は要求に応え、この特別な時期にイラクに滞在したと思っています。 
                 
              ◆イラクの人々には歓迎されましたか?  
                彼らには非常に歓迎されたと思います。私がオーストラリア人で、私の国が戦闘に参加したことを知っても、彼らはそれまでと変わらず私達を受け入れ、慕ってくれました。それは彼らのホスピタリティー精神の一部であり、彼らの信仰の一部だと思います。それにはいつも驚かされます。 
                ただ、今までに一度だけ彼らから敵意のようなものを感じたことがあります。ある病院に行った時のことで、そこには爆撃で大怪我を負い、死にかけている子供がいました。父親はその傍らに立っていましたが、私を見るなり怒り出しました。「民主主義の名において、あなた達は我々の子供を殺し、虐殺しているんだ」と。それが、私が滞在中に唯一出会った敵意でした。 
               ◆今回の占有方法は必要だったと思いますか? 
                 
                私自身はそう思いません。過去にも様々なケースがあったと思います。ルーマニアのチャウシェスク政権や、インドネシアのスハルト政権、フィリピンのマルコス政権の他にも、ベルリンの壁の崩壊など、世界にはいろいろなモデルがありました。しかし、私はその当時にハワード首相やブッシュ大統領が権力を持っていなくて良かったと思います。さもなければ、核戦争が発生していたことでしょう。見習うべきモデルは過去にいくつもあります。しかし、もちろん、私はフセイン時代の残忍な行為を軽視するつもりはありません。それは本当にひどいものでしたから。 
                 
              ◆イラクは外部の力を借りなくても、国民の力でフセイン政権を倒すことが出来たと思いますか? 
                 
                幸いにも、ロシア(当時のソ連)との冷戦時代の間、我々は攻撃という手段をとることなく、最終的にソ連は崩壊しました。もちろん、その冷戦下でロシアの人々は非常に苦しみました。私が特に疑問を感じるのは、そういった抑圧を外からひっくり返すことが出来るのかということです。 
                 
              ◆戦争によってフセイン政権時代に抱えていた問題よりも多くの課題が生じたと思いますか? 
                 
                いいえ、そうは思いません。確かにいくつかの問題は出てくると思いますが、これまで以上ということはないでしょう。今までは、本当に過酷な独裁政権だったのですから。これから生じる問題は、イスラム諸国の基本的な問題ばかりだと思います。イラク国民の約6割はシーア派で、彼らは独自の組織を持っています。私はたくさんのシーア派の人達と話をしましたが、彼らが言うには、市民レベルでの反抗運動を起こそうと考えているということでした。今後アメリカが何を行うにも、イラク国民の協力は必要不可欠です。しかし、もしもその国民がアメリカに対して「我々は協力しない」と言えば、アルジェリアと同じケースになるかも知れません。アルジェリアでは、民主化を進める段階でイスラム政権を取り入れた結果、その後軍事政権へと移行してしまったのです。現状、イラク国内では、決定的な兆候は何も見られませんが、イスラム政権のシーア派による大きな運動があっても、何ら不思議ではありません。それこそが、あらゆる問題を引き起こす可能性を秘めているのではと思います。 
                 
              ◆報道されなかった出来事で、報道されるべきだと思われることを何か目撃しましたか? 
                 
                様々なことがいつも周りで起きていました。出来事ではなく、悲劇です。ここ数週間の間でも、いくつかのことが起きました。例えば、反米の群集に向かって米軍が発砲したのです。そして、今朝(4月30日)またバグダッドの西約30マイルに位置するファルージャで同様のことが起き、13人が殺され、75人ほどが負傷しています。以前、モスルで起こった時は、6人が死に、大勢が怪我を負いました。まさに悲劇です。 
                私は、両方の姿を映すべきだと思います。「フセイン政権に比べればどんなことでも歓迎する」と言って歓喜している国民もいれば、反米意見を持った人達もいるのです。フセイン政権の崩壊ばかりを繰り返し繰り返し見せられて、モスルやファルージャなどで起こった問題は全く目に入ってきません。バランスをとるべきではないでしょうか。もちろん、私はイラクが解放された気持ちが全くない、と言っているわけではありません。私が言いたいのは、彼らの国を自分達のもののように扱うアメリカに対して、抵抗する人達もいるわけですから、双方を映してバランスをとるべきだということです。彼らは、はっきりとこう言っているはずです。「ありがとう。でも我々はアメリカを必要としていない」と。 
                 
              ワトソン氏は、イラク・ピースチームの役目は、ほぼ終えたと感じているようだ。「イラク国内で活動する非政府団体はたくさんあります。また、平和運動も年々活発になっています。その証拠として、今回の戦争における活動の評価は10年前のものより断然高いです」。ワトソン氏の今後の予定は未定だが、次の使命もまた「神に導かれる」と信じている。 
              -30 Apr 03 Interviewer: Tim 
                Holland  
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