Vol..137/2009/6
「ジャーナリズムが存在する限り」(再・上)

 「100年に一度の危機だ」そうだ。
 一時期の騒ぎはおさまったとはいえ、耳にタコができるくらい、100年、100年と同じ文言が繰り返されている。確かに昨年後半から始まった世界的な経済危機は、じわじわと自分の生活にまで影響を及ぼし始めている。不安な時代になったもんだ。
 しかし、このところ、ずっと写真の編集を続けている私には、過去100年前の出来事などを振り返る余裕はない。ほぼ毎日、忙しく、職業として写真を撮り始めた1990年頃の写真を見直して、撮影時期を中心に写真の再分類に取り組んでいる。ちょうど今から10年前に撮った自分の写真を前に、ある意味、新鮮である。そこで、自分の写真を見ながら、改めて現在の経済的な危機を考えてみたい。それは、経済的に不安な社会に引きずられるように、メディアやジャーナリズムの弱体化が必然のように起こっているからだ。
 10年前、生意気にも、自分の関係する雑誌の編集者に一斉にメールを送ったことを思い出してくる。今、そのメッセージを読み返してみると、時代はあまり進歩していないことに気づく。現場に出て写真を撮るのが本業である自分が、写真論やメディア論ばかりを強調するのも節度がないかも知れない。だが、この不安な時代にあって、ここにその一部を再掲してみたい。

 
写真を始めた90年代初め、人物ばかりにレンズを向けていた。だが、その人の暮らす環境もまた、その人の表情や仕草に影響を及ぼすことに気づいて、折に触れ、生活に直結する建物なども撮影するようになった。これは米国の歴史を感じさせるボストンの街並み。
 


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