第16話 ハイエナ

 雨は止みそうにありませんでした。
 僕は歩き続けました。
 考えてみれば、彼女がスポーツカーに乗ったり、お金を無造作に使いながら生きていたとしても、それは彼女の自由に違いありませんでした。あんなに美しく見える彼女にしたって、人に言えない欲求やコンプレックスがあったとしても、不思議ではないのでした。それを、勝手に作り上げていた自分のイメージに合わないからと言って、さよならも言わずに逃げ出してしまうような僕には、もうどうしようもないという言葉以外残っていない気がしました。
 僕は、物事を単純に考えすぎていたのかもしれません。


 例えば、高級車や高い腕時計イコール悪いことであるとでも言うように。それでは、安い服を着て、車も持たずに、毎月、毎月家賃を払っている人がみんないい人達なのかというと、その辺のことをはっきり答えられる自信もありませんでした。


 


This site is developed and maintained by The Perth Express. A.C.N. 058 608 281
Copyright (c) The Perth Express. All Reserved.