第2話 「フルーツパーラー」

 僕はこっちに来てみて、言葉は通じないし兄貴からもらった虎の子の餞別もみるみる無くなってしまって、始めの2ヶ月くらいはただオロオロと何もできないまま、過ごしてしまいました。お腹が空いてしようがないので街に出てみても、なんだかみんな別世界の人みたいにきれいだし、かっこいいし、なんか僕一人がこんな豊かな街で、腹空かしてウロウロしているみたいで。かといって日本食とかの外食ばかりしていてもお金がメリメリ減っていくばかりだし、どうしていいかわからなくなって兄貴のテレビ局に何回か電話をしたのですが、いつもなかなか兄貴が出てくれなくて、待っているうちに公衆電話が切れてしまうということが続きました。
  とにかく、最大の問題は言葉でした。今から考えると語学学校とかに入れば良かったのですが、

そういう頭も無く、街で思い切って話し掛けてみると大抵コリアンかチャイニ−ズだったりして、たまに日本人の時もナンパとかカツアゲとかと間違えられて、みんな理由をつけては逃げて行ってしまいました。逃げられてみると、ショーウィンドーに写る自分の顔は、頬も削げ落ちて無精髭も汚らしく、まるで減量中のボクサ−みたいで、これじゃみんな逃げてくわなと妙に納得したりしていました。

 


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