パースエクスプレスVol.122 2008年3月号

オーストラリアで暮らす日本人にとって複雑な思いに駆られるのは、ここ数ヶ月、メディアに度々登場する日本の捕鯨活動ではないだろうか。オーストラリアに近い南極海で捕鯨を行う日本に対しての非難の声は強調され、環境保護団体の過激な行動が英雄扱いされているようにも捉えられる。しかし、3月3日に起きた事件の後、日本政府は外交的行動に出た。これでまた、捕鯨国日本への批判が高まらないとも限らない。一体どんなことだったのか、その内容を紹介しよう。

捕鯨国日本と反捕鯨国オーストラリア。これがそもそもの衝突の原因だが、日本としては鯨を食用、資源としてこれからも有効に利用していくために調査としての捕鯨が必要であるという主張。これに対し、鯨は絶滅の危機にある貴重な動物であり、鯨を殺戮する調査などは必要ないとするオーストラリア。オーストラリアは南極海を自国の領海と定め(国際的には未承認)、ここに入って捕鯨をする日本は「悪玉」となるわけである。日本に対して、調査捕鯨とは名ばかりで、実際は商業捕鯨をしていると非難する政治家もいる。今回の事件は、3月3日、南極海で操業している日本の調査捕鯨船、日新丸に対し、米国の反捕鯨団体「シー・シェパード」の船(オランダ船籍で母港をオーストラリアとする)が近づき、悪臭を放つ液体の入った瓶や白い粉の入った袋を投げ込み、日新丸の乗組員3名が目に液体が入るなどの軽傷を負ったということだ。

そしてこの度「日本政府は東京で、オーストラリア、オランダ各大使を招集し、反捕鯨団体の行動を制御するよう要請した(3月4日、The West Australian on line)」という結果に至った。オーストラリア政府はシー・シェパードの抗議行動を非難したが、シー・シェパード側は誰にも怪我など負わせていないし、証拠も示されていないと述べ、更に、我々を非難する代わりに、日本人がやっていることを非難すべきだとも加えた。

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