第1章 不安から希望への移住

 1927年2月。日陰でさえ気温は42度もあった。この暑さには地元の人でも慣れることに苦労する。海辺近くでは夕暮れ時になると吹いてくる「フリーマントルドクター」という癒しの風がその暑さを和ませ、猛暑も数日しか続かないということがわかってくると、この暑さにも気楽に構えられるようになってきた。けれど、数日前に夫と3人の子供たちとここに到着したばかりのフロリ(筆者の母)は、まだそれを知る由もない。彼女には後にしてきたイギリスの厳しい冬とはまったく正反対の酷暑が余計に厳しく感じられた。さらに、フリーマントルへの旅の途中にできた首の後ろの腫れ物がフロリを悩ませていた。

フリーマントルに到着してすぐに医者に切開してもらったものの、母の様態ではそこからさらに300キロも南下するマーガレットリバーへの長い旅路には就けそうにもなかった。

 


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